漫画の国の散歩道 谷間夢路(出井州忍)の巻

私は漫画・劇画はかなり絵に比重を置いてる人なんですけど、劇画をやりはじめるときに、絵柄的に、参考にしたとかそういうのはあるんですか?

うん、なんでも、やっぱりモノマネから入ってったほうが良いと思うんですよね。というのは、すばらしい人に感化されて、こういう絵を描きたいと思う人の、まず、そっくり同じに描いてみる。だからボクは、ほら、ワラ半紙に小学生のときうしおそうじさんの漫画をトレスするように模写したっていうのは、これは、やっぱりすごかったと思うよ今、考えてみても。ヘタはヘタなりに、その人と同じものを描こうと思うのがいいの。

ええ。

そうすると、まあ、今でこそ思うんだけれども、その人が描いてた状況と同じ次元にフイットする環境に入れるかもしれないでしょ。もし、同じ境地に近ずこうと一心不乱に模写していると同じようなインスピレーションが来る可能性があるわけよ。おんなじ物描いてるわけだから。写経なんかの修行と似ているね。ある物理学者や宗教家や精神医学博士に言わせると人間の精神は無意識(潜在意識)という四次元ですべての人間がつながってると言っているんだけど一生懸命その人とおんなじものを描いてると、その人が描いてるときと同じ状況のインスピレーションが来るチャンスが大ってわけ、だってみんながつながって同じ立場なんだから。

はい。

だから、よくウチのスタッフなんかにも、描かせると、自分うまさを出そうとしたり個性を入れたりしようとするんだけど、「まだそういう段階じゃないんだから、そっくりそのまま見本と完璧に同じように描け」っていいますね(笑)そのほうが上達が早いんだから。絵がうまくなるんじゃなくて、そういうインスピレーションを呼び込む訓練してるわけだから。だからその人と同じになれば、その人と同じチャンスが来たり、そういうイメージが浮かぶっていう、チャンスが来るわけだから。その人の世界に入るみたいにして描かないと。一生懸命やることによって、その人と同じように入る可能性ってのがあるわけだから。芸能人なんかでもそう、今ものすごい受けてる人達も、最初の頃見ると誰かのマネしてるわけ。歌手でもそうだよね。だんだんそれが、その人の世界になってくるのは、マネた人に近づいてきた時、自分でああでもない、こうでもないと悩んでいるうちに真似られてる人と潜在意識がつながって場が一体になるってことがあったりして、何かを感じて掴むその何かに自分の人生や個性や運命が重なってスターになったり偉人、発明、発見者になる。世界的に有名な、横尾忠則さんもそういうような説を書いている本を読んだ記憶があるけど。あの人なんかが出てきたとき、絵も独特だけど、あの頃、イラストレーターいっぱい出たんだよね、ああいうサイケデリックな絵を描く人達が世界に何人か同時に出てきたけど横尾さんはその中でも最高の世界的な芸術家ですよね。

私も絵が好きで、抽象画とかたくさん模写したんですけれど、そうすると、見た目にはなんだかわからない幾何学的な模様であっても、描いてると、あ、これは机なんだな、これは人なんだなっていうのがわかるんですね。

だから、ようするに、自分に現実に現われないかもしれないけれど、フロイトが言うように人間の潜在意識連帯感ね、意識ってほら、表面的な意識と潜在意識があるでしょ、よく海に浮かぶ島に例えられてるけど、意識は本人が自覚してるから表面的でつまり海面から 出てる島海面下が潜在意識でも島の下ってみんな海底で繋がってるわけじゃない。ようするに、全部の人間は潜在意識で繋がってるという説になるらしい。だから、 同じことをやると、一瞬つながることはあるわけ。つまり、そういうふうになりたかったら、あるいは有名になりたかったら、すごくなった人のことを一生懸命、同じことマネしたりとか、やればいいわけ。そうすると、わりと、はやく、そういう、なんかを与えられたり、そういう場所に行っちゃったりするんだよね。だから頑固で意固地で、全然ダメなやつって、いつまでたってもダメなの(笑)で、けっこう調子よくて、ものまねなんかしてるやつがさ、ふっと、 ある日突然変わっちゃったりするわけよ。で、頑固なやつでも、最初からそういう才能があれば、変われるチャンスあるけど、それは、もう、そうとうな運だとかがないと、自分だけでやろうとしてっからね。だけど、そうやって、いろんな人のモノマネなんかして、で、一生懸命、その模写したりだとか、同じ状況になろうとしてると、チャンスはいっぱい、あちこちあるわけ。

ええ。

ま、そーいうこと書かれてる本沢山でてるからお読みになってるでしょうけど、 成功するなんとか、とか幸運を呼ぶあれだとかさ(笑)

はい(笑)

運の研究とか。四次元の世界とか、潜在意識とか、深層心理とかの本読むと、だいたいみんなおんなじようなこと言ってるよね。宗教も。

いや、潜在意識とかの本はおもしろいですよね。

今、恐怖の快楽で描いてる、紅孔雀っていうのがそういうテーマなんだ。精神科の女医と、孔雀王呪術の術師、役行者の流れをくむ、術師の女が、二人でいろんな、不思議、怪奇現象を解いてくんだけど、最初は精神的な病かなあと思っ解説をフロイトだとかを引用してドラマは進むんだけど、実は、呪術でやられてるとか、ね、8話ぐらい続いてんだけど。ボクは昔か ら、ミステリーゾーンとか世にも不思議な物語とかテレビで見てたから、けっこう、四次元とか古代の神秘とかをテーマにする漫画は好きでね。

ええ。

砂漠は 古代核戦争があった残骸とか(笑)ピラミッドは核シェルターだったとかね。

私も大好きなんですよ(笑)たぶん世間…インターネットの人はね、私のことを漫画が一番得意ジャンルだと思ってるんだろうけど、実はそっちの方が得意で(笑)

ああ、そう。いやほんと、僕も好きでさ。

TBS時代は、そのウルトラQでしたっけ?それしか描いてないんですか?

並行してはちょっとは、東京日の丸文庫で描いたりはしてたね。うん、ぶちかましの詩っていう、その頃では珍しいアメリカン・フットボールの話しを書き下ろし単行本にしたけど。東京日の丸文庫ではそれ1冊だけだよ、描いたの。で、そんときに、どうも、編集に山上たつひこさんがいたらしいんだけど、そんときに表紙描いてくれたのが影丸譲也さん…会社は赤坂にあったの。

おお。

青山通りに、昔、若い根っこの会ていう、そういうグループの出版社があって、会長が有名な人なんだけど、会社のわりと近くにあってね、友情っていう本出してたの。ちょうど、TBSの仕事…ウルトラQも終わって、単行本もどんどん無くなってって、でも、やっぱ描きたくてしょうがないから、「あそこで漫画描いたらいいかなあ」って思って昼休み売り込み行ったの、そんなたくさんのページじゃないから描けそうだなって。そしたら、そこに梅本さちおがいたんだね。

へええ。

何年か前、彼がまだジャンプで大成功する前に一回、そう彼がまだアニメーターやってるときに会ったんだけど渋谷で、その時カレは「東京出てきて今ジャンプ売り込みやってんだ」、「カブラペンで力強く描くといいよねえ」とか、僕はまだ会社行ってるときだったから、いいなあと思って、で、そのあと、もう、あれよあれよという間にスター になっちゃってね。それが、たまたまそこにいて、紹介してくれて、「この人知ってるから」って。で、そこでね、4ページぐらいの、少女物の連載物描いて、そしたら、「レタリングできんの?」「できますよ」って(笑)本一冊、レタリングから、タレントの、そういう出世話みたいの、コラージュして、写真と組んでパノラマにしたり、いろんなページがあるから、そういうのを「やる?」「はいやります」って(笑)もう、全部やった。似顔絵描いたりもしたし、1年ぐらいやったかな、そこで。

そうですか。

うん。

漫画家1本になったのは・・・?

28んときだね。

横山プロに…入ったんでしたっけ?

いや、横山プロの外部ブレーンですかね…中には入ってないの。

あっそうすか。

うん、遊びに行って手伝いにってのはやってたけどね。

じゃあ、所属ってのはないんだ。

所属はないね。

ああ、そうなんですか。それ珍しいですよね、そういうパターン。

そうでしょ(笑)

プロになる前に、すごいなあとか、この人好きだなあとか思ってた、漫画家じゃなくても、絵を描く人でもいいんですけど、誰かいます?

最初影響受けたのは、うしおそうじさんかな。それから、鈴木光明さん、少年誌で時代劇描いてました。少女漫画なんかもやってて、あと板井れんたろうって、吾妻ひでおさんのの先生だったかな…。その人が時代物描いてて足軽の話なんだけど、肩にハヤブサなんかのせたカッコいい絵で、手塚さんの流れみたいな感じだったけど、も のすごい斬新で、好きだったね。 あとやっぱり、白土三平さんの絵ってのは、すごい荒々しいけど、かわいらしいし、すごいなあと思ってたね。最初、影丸伝を見て、すごいなあ!と思ったもんね、あんなに 荒々しく描いてんだけど、描きなぐってるみたいなんだけど、きちーんと、描いてあんだよね。だから、動物物なんか描いても、凄かったしね。

白土さんも、けっこうな巨匠だったのに、前に進む人だったですよね。

うん。

ビッグコミックで、かなり斬新なのやってたじゃないですか。

神の話とかね。

ええ。

だから、ほら、あの人もともとさ、あの、カムイ伝も影丸伝もそうだけど、体制と庶民との戦いみたいなの描いてんでしょ。

ええ。

今、僕なんかもこう、読み出したけどさ、陰陽師とか、影の力だとか、あと宗教的なもの、そおいうのすごい勉強した人だと思うんだ、そーいう人間の歴史や自然や神々のテーマに奥深く入っていくとだんだん人生、そんなにいきり立ってやっても……いんじゃないの?って。俗っぽくやることの空しさみたいなのが、いっぱい出てくるから。調べてるとだんだん、物事死ぬほどやっても…ってなってきちゃったんだろうね、仙人みたいな人だから。だから、あんだけのもの描けたら、そうとう、調べ物したと思うのね。ほら、忍術でさ、水田地帯でさ、戦うように仕掛けてさ忍者が戦ってるうちに、相手が何も使わないのに倒れてしまうって設定の話があったんだけど…そう、丑三の術だけどダニね、ダニをね利用したって術、つつがむし、あれで見て、そういうのがあんのかと。つつがむし病って日本で発生したらしいね…。そういうのを利用して、忍術にして、わけがわかんないうちに相手が倒れてしまうっていう、ミステリアスな術を作って、あとでちゃんと解説する。そういう沼地にはつつがむし、ダニがいっぱいいて、それ に襲われると高熱を出して死んでしまう、発想がいいよね、あとほら、天界だとか、坊さんの話とか、いっぱい出てきてるから、そうとう、調べ物した人だよね白土さんは。

そうですねえ。

今、呪いとかそういう影、闇の世界を読むようになって、陰陽術とか、おもしろいなあと思うよね。阿部晴明がものすごい人気出てるけど。漫画やドラマのテーマとしては最高だね。

ええ。

日本の呪い 小松和彦/カッパサイエンス・光文社

天狗の話とかもおもしろいよね。

そういう民俗学的なやついいですよね。

そうね。好きだね(笑)

ええ(笑)

天狗の話で、八天狗とかさ、だいたい、坊さんがものすごくなって、天狗になって、魔道に入る…天狗道って、ほら、五道っていうのが人間界にあるけど、天狗道っていう 別な界があんのね。天狗、寅吉の話とかあるじゃない。天狗に連れられて空を飛び超能力を見た少年の実話あれだって平田篤胤という民俗学者が学術書としてかいてたりする。

そうですね、はい。

秋田の、サスペリアで、ようこそ地獄寺っての描いて、おしら様の話描いたことあるけど。馬の首みたいなのがシンボルの民俗信仰の神様だけど、その話を描いた時白山の神様、白山比め神、白山の開山者、最澄、役行者、密教とか、いろいろ調べておもしろかったね。その偉い最澄っていう坊さんが、天狗になった話なんかももあったりしてね (笑)だからあの世界は、ネタにしたらつきないくらいおもしろいね。

んーでも、ほんとに深くつっこんじゃうと一生もんになっちゃうんでね(笑)ヤバイっすよ。

そうそう、調べちゃうと発表したいもんだから、全部載せたくなって…、いかに短くして、漫画の中にさりげなくいれるかが漫画家の才能なんだけど、レポート用紙みたいなナレーションの漫画時々あるよね、誰とはいえないけど。

そうですねえ。

こないだ、レディースの、純愛の快楽って本、隔月で出てるんだけど、もう3年ぐらい連載してる「あっ ふん産院繁盛記」で、老人をテーマで描いたんだけど、最近の人はあまり老人を大切にしないっていう ことで、なんかいいネタないかなあって、民話の本パラパラ見てたら。蟻通し明神っていう大阪にある神社の、蟻通し明神縁起話ってのが載ってて…あんまり知らないでしょ?

ええ。

なにかなあって見てたら、昔の姥捨て山の話のひとつなんだけど、いつの時代かの天皇が、70歳以上の老人は、面倒かかるばっかりだから、山へ捨ててしまえって、政令出したんだって。ちょうど、蒙古か、中国かの王さまが、日本の天皇に、難題をかけてきたらしいの。それは何かっていうと、途中を切った木の、どっちが上でどっちが下か当てろっていうのと、それから、めっちゃくちゃ曲がりくねった石の中に、糸を通せっていうのと、からみあった蛇のおすめすの見分け方を解けって言ってきたんだって。天皇が困って、それについてた大臣の、実は大臣は70歳以上の両親がいたんだけど、自分 の家に隠してたんだよね。天皇は一人で考えてもわからないし、それを見てた大臣が、親にそっと聞いたんだって。途中を切った木の、どっちが上か下かっていうのは、どうやって調べるんだって聞いたら、それは水につけると、ちゃん上はうえに、下は下になり、曲がった石に糸を通すのは、めちゃくちゃ 曲がってても、通す方法は蟻に糸を結んで、一方から入れて一方に砂糖をつけとけばちゃんとそこへ出る。蛇のオス、メスは細いやわらかいものを蛇に巻き付け騒ぐ方がオスでじっとしてる方がメスだと教えてくれた。さっそく天皇に進言し難をまぬがれた。天皇が大臣に礼をいうと実は自分はかくまっていた年老いた両親から教わったんです申し訳ありませんと正直に告白した。それを聞いた天皇が、年寄りというのは大切なものなのだと深く反省してその政令をやめた。それが大阪の蟻通し明神の縁起話になった。それを使って、年寄りを粗末にすんじゃないよっていう話をやったんだけど。そういう、なんかちっちゃい話がいっぱいあんだよね。ためになる話が民話や俗話や伝説のなかには。

そういうのいっぱい集めるとおもしろいですよね。

だから、そういうのをビデオでもインターネットでも、子供向けにでもやるの。これからは感動の時代だから。昨日も編集と飲んで、レディース界もエッチから、家庭物に行って、その後に今、嫁姑になって、また離婚とかになって、流行ってるけど、最終的にはやっぱしちゃんとした女性達が読むっていう内容が求められるでしょ、特集みたいなテーマじゃないものをやらなくちゃ。やっぱりちゃんとしたの作った方がいいよ。最終的にやんのは、そういう感動的サクセス的明るいテーマ…次は、サクセスだって。いまでも奥さん連中が、会社起こしたりやってんじゃない。そういう、サクセス…いろいろ堪え忍んでも成功していくよおなもの、サクセス・ストーリーの時代だからって言ったら、「いいこと聞きました」って(笑)

またひとつ…(笑)

やっぱ、明るい物を欲しがってると思うこうゆう不況で暗い時代は、。ただ、夫婦、恋人同志が幸せになっていく物語りだけじゃダメ、それを越して儲かる話をもうひとつメリットとしてつけて作った方がいいね、アイデアで会社作って、 いろんな敵なんかと戦いながら成功して、女性としても美しくなって大会社を作ってく、そういう夢のある物語っていうのは、これから今年後半はいっぱい出てくるよ・・・ボクが仕掛けてるから(笑)

最近の連載されてる漫画とかって見ます?

誰の?連載されてる漫画?自分の?

いや、他人の。普通の雑誌とかの。

昔はね、いろんなの描きたい人だったから、コロコロから全部見てた。でも、少女ホラーやるようになってから、ほとんど見なくなっちゃったね。ときたま、モーニ ングとかアフタヌーンとか、斬新な人が出てきたりするから、ペンタッチだとか処理方法でなんかないかなあって、たまに本屋では見るけど、名前はもうわかんないね。絵の感じで、「あ、これいいなあ」って。

仲間の若い奴は・・・20代なんですけど・・・けっこう漫画読んでるんですよ、出るやつ出るやつ。でもやっぱつまんないとか言うんですよね。で、何読みたいんだっつったら、釣りキチ三平だとかドカベンなんですよ。

うん、そうね。今のってね、ドラマがありそうで無いんですよ。たぶんあるとは思うんだけど、人間がドラマやってないから。釣りキチ三平なんか、あんな、やってて、やっぱドラマあるんですね。動いてるんですよ。今のって、みんな静寂しててさ、ほんとアニメみたいに、アニメの動かない絵コンテみたいな。あれはアニメで動いて声が出れば通用する絵だけど、紙でそうやってくと、メリハリみたいのだけなんだよね。

ああ、なるほど。

あの頃の漫画っていうのは、動いてるもんね。

そうですよね。

線も動いてるし。

はい。

だから、今も残ってるベテランとか、やってる人は、ジョージ秋山さんにしてもなんにしても、やっぱ、線が生きてる人達なんですよね。今、きれーに描いて、処理してさ、細い線できちーんと描いてる人達は、たぶん残んないと思うよ(笑)その時代、単行本売れるかもしれないけど、でも、何年かたって、釣りキチ三平とか手塚治虫さんみたいには売れないよね。ほんと、古い絵になっちゃって。漫画はスーパーリアリズムだから等身大のイラストのようなのはダメなの、リアルなものを一度頭の中に取り込んで自分でデフォルメして描く。そーゆう漫画少ないよね。だから、そのへんがやっぱり、雑誌が人気出ない原因だね。盛り上がって描いてるようでそうでない、サービス精神もないよね。自分だけ満足してるってカンジ。やっぱり、釣りキチ三平なんかにしたって、あんなカッコして、ルアー投げる必要ないのよ(笑)回転して飛び上がったりとかさ。すがやみつるさんのゲーム…あらしもそうだったな(笑)でも、これがほんとの漫画なんだな…

ありました(笑)

なんか乗り移ったように描いてるでしょう、ああいう人達っていいよね。今のまんが、なんか、さめて、きれーいに描いてるって感じだもんね。あれじゃあ、やっぱ、読むほうものらないよね…。

私も最近のは全然読まないんですけどね。やっぱみなきゃダメかなあと思って、こう、開くんだけど、もうダメなんすよ。

暴走族みたいキャラクターのが代替わりして、次々に出てきてさ。別に暴走族のだから悪いッてンじゃないけど作ってておもしろいのかなあ編集さんもってね・・・(笑)

編集がもう、たんなる就職で入ってきてるようなやつが多いらしくて、漫画のことよくわかんないらしいんですよね。

漫画がどういうもんかっていうのをキチンと伝えたいね、最近、21世紀漫画力ての描いてんだけど、背景描かない漫画家はもう、漫画家じゃない。背景こそががその作家の世界だし、音だとかはそこからくるんだから背景描かないやつは、もう、作家としてはゼロ…ってぶちかましたんだけどね。最近はみんなキャラクターばかし懸命に描くけど、漫画家なら誰だって人物は描けるからデビューしてるの。読者だって、漫画家なんだから人物が描けるのはあたりまえでしょ!もっと人物ばっか自己陶酔して描いてないで雰囲気だしてよと叫んでるのに…、漫画は、背景で、音饗効果と作家性を出していくんだからね。作家の言いたいことっていうのを背景で伝える。キャラクタ ーで言うんじゃないんだよね。キャラクターが言うのは物語のセリフで作家性じゃない。背景が語りかけることが強い。名画がそうでしょ、ムンクの叫ぶ人なんかすごいよね、そういうのって今の編集の人は感じないのかなあ、なにか全然求めてない気もするけど。背景だって、もう、製図法でデフォルメが全然無いじゃない。大友克洋さんは、やったかなって思うけど、新人スタッフに背景かかせると処理方法で設計図描くみたいに黄金線なんかひいて(笑)やってるわけ、学校で習ってきた方法だとコマに黄金線がかききれなくて別な紙を原稿用紙に貼って描いてる(笑)それは、「このコマの面積だけでやりなさい、ここで」って(笑)

なるほど(笑)

とくにビル街描く時なんかは困ってましたね、奥行きを出すために黄金線をひくと、紙いっぱいはって黄金線つけてやってる。「そんなこと学校でやってんの?」「ええ」とか言うので。「じゃあ、この中にものすごい遠景のがあったら描けないんじゃないの?」って(笑)黄金線は頭の中に入れとく定規で。自分の感覚で描く、そうやって描いていかないとかききれないわけでしょう。街並みなんか描くときは、あっちこっちに視点があって、こっちがわのビル、こっちがわのビルの、でもかれらにかかせると並行に建ったビル街になってみんな 同じに描くわけ。たしかにバランス崩れてないっていうけど、ぜーんぜん生きてないわけね。だから、そんな黄金線なんか、こっちのビルはこっちでやって、こっちのビルはこっちでやって、倒れかかってる感じにやると、立体感が出るんだから(笑)ついでだからいうけどビルの線はコマと一緒にしない・・・縦線がコマと一緒じゃコマん中に埋もれちゃって、全然浮き上がってこないから。「斜めにしなさい」って。コマとはなるべく対角線上にやると動きも出てくるんだからって。コマの線に並行にするのはやっちゃダメだって。学校ではそういうこと教えないからね。黄金線とかいって昔あるスタッフなんか3枚ぐらい紙足してる(笑)「おい何してんの」って(笑)

そういう学校で教えてる人って、どういう人なんでしょうねえ。プロ・・・漫画家さんじゃないですよねえ。

いや、プロの人もいたんだけどね、昔は。だけど、ほんとに漫画描いてる人はいかないか・・・敵を育てるんだから(笑)

ははあ。

センスだから、漫画って。そんな杓子定規にやるんじゃなくて、頭の中で描く、コマの中に遠近感思い切りつけて、こっちの遠近感とこっちの遠近感は別にしてやんないと…上からも下からも遠近感つけるようにやんないといけない、ほーんとにウマイ人なんかの、ベテランのアシスタントで背景のうまい人なんかのは、ビル街バーっと描いても、みんなこっちはこっちで独立してスッキリ見える、下書きでも黄金線なんか使ってないからね。背景みるとすぐわかるその人のセンスが。

今度から、ちょっと気をつけて見てみます。

画面にまっすぐ描く人はダメね。人物にしても、釣りキチ三平なんかは、動いてっときは必ず対角線上に、垂直には立ってないで斜めになってる。目線で埋もれちゃうからね、縦線と横線のアングルに対角線上にね、やるってえのが、立体的に出てくる、人間 の目の見方がそうなんで、いい作家っていうのは、必ず対角線上になってる。そうやって見ると、今の、若い人達で、表情豊かに、表情だけは(笑)豊かっつても、止まってんだよね。動いてる豊かさじゃないよね。アニメの一瞬を止めたような、ね。だから、笑ってっときは歯なんかむき出してさ、すごい迫力あるように描いてるだろうけど、止まってるデザイン画。本宮ひろしさんはガーって口開けると、もう、バランスなんかバラバラだけど、動いて見えるんだよね。だけど、本宮ひろしさんよりしっかり描いて、ものすごい迫力があるように、歯の奥までちゃんと描いてガアアアっとこう開けてさ、トーン処理して、そうとう描くの大変だっただろうなあと思うけど、1枚絵なんだよね。動いてないわけよ。本宮ひろしさんには追いつけない…みんな、もう、そういうふうになっちゃってんじゃない。

ああ、そうですよねえ、若い作家軒並みですもんねえ。

あれが、やっぱ、いいと思ってんのかな。それをさ、作り手が「そうじゃない」って言って、昔の漫画と今の漫画の差を言って、うん、こういうとこは、これはいいとしても、こういうことをもっと足さなきゃダメって言って、それ以上のものを、作り出していかないと。でもそれは指摘できないね、編集がわからないと。だから、今まで、漫画がすごくなってきたっていうのは、編集が・・・いい編集がいて、お互い作ってきてっていうのがあったから。だから、そういう面で、全ての面でもう漫画界は、いいもんができない状況になってるわけかなあ。いや、本はまだまだ 売れてるよって言う人もいたけど、その本がものすごくって沢山発行してるわけじゃなく、大手で、そこそこ描いてるし、それなりに販売力があるから、本 屋にも配本されて行ってるから、買ってるだけで、それで何十万部も出てるのかもしれないけど、漫画の魅力で売れてるわけじゃけしてない。もう、ここ何十年社会現象を起こすようなヒット作が出ていないのが証明しているね。だからこれからはそういう本は、減っていくだけで、増えはしない、どんどん 増やすのは誰だっつうと、まったく違う方法論を持った新人が出てきて、バーっと火をつけブームを起こし社会現象になる、そういうのが出てこないシステムになっちゃったんだから、もう衰退する一方かなあ、淋しいけど・・・。

私が、今年に入って少し体調を崩してしまい、せっかくお邪魔させていただいて、お話を伺っても、ロクな反応もできずにいたんですが、やさしく接していただきました。こっちがわかってないと思うと、何度も何度も説明してくれるといった気遣い・気配りがうれしかったです。

先生は、貸本時代〜エロ劇画〜大人誌〜少年誌〜少女ホラーといつの時代・ジャンルでも活躍してた人なので、ほんとにいろいろなことを知っています。作家としてだけではなく、プロデューサーのような役割も担ってきてます。物事を大局的に捉えられる感性を持った人の話はとても重要です。現在まで、過去のその時点、時点で常に、求められているものは何か? これから求められるのは何か? ということを意識してやってこられ、そういう嗅覚みたいなものを持っている人なので、漫画という世界・・・ビジネスとしての漫画、あるいは漫画そのものに関しての意見はかなりシビアなものを持っておられるようです。
これからそういう世界に進もうとしている人は、ぜひ参考にしてください。

今回アップしたのは、お話いただいた中のほんのちょこっとでしかありません。また機会を持って、第2弾、3弾とやっていきたいと思っています。

2001.2.24 土曜日 とある洋食屋にて

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